第7章 : 今の受験教育は「死の行進」

【ポイント】

  • エスカレートする学歴偏重社会
  • 社会にでた瞬間に「学歴キャンセル」になる
  • 今の教育では、子ども達は武器をもたない「丸腰」のまま社会人に。

第7章 : 今の受験教育は「死の行進」

中学から始まった受験勉強は、

高校、大学、大学院まで、12年間つづきました。

そのあいだずっと命を削り続けて、

厳しい受験戦争を乗り越え、僕が手にいれたのは、

決まった答えを、早く正確に出す処理能力

でした。

幸い平成の30年間は、

日本ではその力を必要とする価値観の社会

でしたから

就職もできたし、

現時点でもエンジニアとして活躍できています。

でも、ちょっと待ってください。

決まった答えを、早く正確に出すことが、

一番得意なのは誰でしょうか?

もう、おわかりですよね。

そうですAIです。

今後10~15年でAIが

人間を超える能力を持つ時代が来ると分かっているにも関わらず、

そのころに社会に出る子ども達に、

AIに負けることが分かっている能力をつけるための

教育をしているのです。

30年私達がうけた教育とほとんど変わらない教育を

今だに子ども達が受けているのです。

だれも気付いていないのか、

気付かないふりをしているだけなのか、

僕はこの事を考えるたびに背筋が凍るほど

恐ろしく思います。

今の日本の教育構造は

明治維新以降、100年かけて培ってきたシステムです。

「基本的に全員が同じペースで効率よく学習する」という

思想に基づいて設計されています。

新教育指導要領では、プログラミング思考など

時代に合わせたカリキュラムを導入しつつありますが、

英語ですら、国際的な必要性を叫ばれながらも

僕たちが中学生だった頃から教科書はほとんど変わっておらず

30かかってやっと小学校授業への導入が始まりました。

これは、また別の機会に話しますが、

AI社会では英語はそれほど重要ではなくなります。

(受験科目としては残るのでやらなければいけませんが)

それほど教育改革のペースは遅いので、

これからの10年やそこらで今の学歴偏重の受験構造から、

変わる事は難しいです。

と言うよりも、むしろ少子化によって

親の資源の集中、学校経営の差別化により

学歴偏重はエスカレートする傾向にすらあります。

親子で必死に受験を乗り越え、

優秀な処理能力と、一流の学歴を手に入れ、

有名起業に就職できた人は、

いわゆる『勝ち組』とよばれるでしょう。

しかし、社会にでた瞬間に、

それまで必死で身につけた処理能力は

決まった答えを、早く正確に出すことのできるAI

に取って代わられてしまうのです。

膨大な、時間と、資金と、青春と、命をかけて

手に入れた学歴が

選ぶ職業によっては

社会に出た瞬間に学歴キャンセルされてしまうのです。

自動車開発最先端のエンジニアの僕ですら、

社会が求める技術、能力の変化を感じ、

オールドタイプのエンジニアになりつつあることを

日々強く実感しています。

AIやITエンジニア達はおそらく

もっと強烈に時代の変化を感じていると思います。

『今の時代ですら』です。

そして、そんな未来が必ず来ることが分かっていても、

今の受験教育、学歴偏重は簡単に変わることが出来ないというジレンマ。

このままの受験教育だけを続けることは

ある意味「死の行進」とも言えます。

僕は、このままでは

『求められる能力において価値観のゲームチェンジがおきるAI社会

我が子を「丸腰でおくりだす」事になってしまう!

と思いました。

僕のように、いえ、むしろ僕よりつらい受験戦争

命を削って乗り越えた我が子には、

「絶対にそんな思いはさせたくない」と強く誓い、

自分の経験を生かして、

今の受験教育カリキュラムでは伸ばせない能力を

「楽しみながら伸ばす仕組み」を作ることに全力を挙げる決意をしました。